生まれ変わっても

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5月9日(土)、荻窪のブックカフェ・6次元で「校正ナイト」と題したお話会をいたしました。
6次元店主のナカムラクニオさんを聞き手にお迎えして、なぜこの道を選んだのか、校正の仕事とはどんなものか、などお話しさせていただきました。

そもそもは『さんぽで感じる村上春樹』(ナカムラクニオ・道前宏子、ダイヤモンド社、2014年)に関わらせていただいた折、ナカムラさんがこの仕事に興味をお持ちになって(とおっしゃってくださって)、ことあるごとにいろいろお尋ねをいただくので、ではいっそのこと校正の仕事に興味のある方を集めてお話ししましょうということになったのです。

とは言っても、たとえばおなじ出版業界でも作家や編集者と比べればけしてメジャーとはいえないこの仕事、興味のある方というのが果たしてどのくらいいるものか。ぜんぜん人が集まらなかったらどうしよう……と不安は大きかったのですが、蓋を開けてみれば、予想をはるかに越える人数の方々にご来場いただくことができました。

私自身は一介の校正者、それもいまだこの道十年にも満たない若輩者で、おまえに校正のいったい何がわかるのかとお叱りをいただけばまったくその通りでございますとうなだれるほかないのですが、それでも、ナカムラさんの的確な質問と進行、会場の方々のまなざしに支えられて、おぼつかない言葉をたぐり寄せるように夢中で必死でお話しするうちに、ふだん自分が校正の仕事をどう捉えているのか、あるいはどんな部分を曖昧なまま見ないふりをしていたのか、ということがどんどん浮き彫りになっていって、あらためて自分の仕事を考える最良の機会となりました。

ナカムラさんから「生まれ変わったら何になりたいか」と訊かれて、一瞬といっていいわずかな時間のあいだに、めまぐるしく考えをこらしました。
私にとって校正の仕事とは、ゲラ(校正刷り)に印刷された言葉の裏にある著者の(編集者の)意図を探すこと、言葉にならなかった言葉を聞き取ろうと耳をすまし、目をこらすことです。自分自身本が好きで一生のうちに一冊でも多くのよい本を読みたいと思うがゆえに、よい本を作り、世に送り出すことにわずかでも寄与できればと思います。それをかなえるのに、校正者以外の職業を、いまのところ思いつくことができません。

そんなわけで、生まれ変わっても私は、校正の仕事をしているのかもしれません。

 

MU20150515

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