替刃式

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ヒゲ剃りを習慣にしておよそ20年。
米国のジレット社による二枚刃の安全剃刀「ジレットセンサー」で髭剃りを覚え、いまは後継の「ジレットセンサー エクセル」をと、T字の替刃式安全剃刀を使い続けています。安全剃刀の刃の枚数は、三枚、四枚、五枚…五枚刃+1と、数年おきに増える中で、すでに本体は廃番、辛うじて替刃のみが供給される二枚刃を使い続けている私は、ヒゲソリストの保守派と言えましょうか。

替刃式の安全剃刀は、20世紀初頭、ジレット創業者のキング・キャンプ・ジレットによって発明され、第一次大戦時の米軍兵士への支給をキッカケに広く普及するようになったそうです。鋭い切れ味でメンテナンス不要という便利さや、現在では髭をツルリと剃るのが社会人たるマナーといった「清潔さ」または「清潔感」が重視される社会的要請の変遷もあり、百年以上も進化しながら使われるロングセラーの道具となりました。

現在は、替刃式の安全剃刀と電気シェーバーが髭剃り界の二大勢力ですが、昔ながらの直刀の剃刀も根強い人気があるようです。「使い捨てずに手入れする」ライフスタイルの再評価も。時には映画の小道具としてハードボイルドな世界観を表すにも直刀の剃刀がふさわしいもので、代替不可能な魅力を持ちつづけています。

ものづくりの現場における替刃はどうでしょう。

まず自分の話をしますと、竹の加工の大部分は手作業で、扱う刃物も自ら研いで手入れする道具がほとんど。ただし鋸は替刃式を用いています。小刀も最近は替刃式が色々あり、一部の木材加工や皮革の加工などでは替刃式のカッター類を活用される方もいらっしゃるようです。

替刃式うんぬん以前に、そもそも手で刃物を扱わず、工場で加工された素材を組み立てるのが主な仕事という現場もあるでしょう。良いか悪いかは一概に判断出来ませんが、末端で取引されるモノの値段が全体に下がり、逆に原料の価格が高騰する状況では、作業時間や工程を短縮しなければ仕事として成り立たない、そんな事情もありそうです。

替刃式の剃刀や電気シェーバーは、いまや当たり前になりました。刃物に限らず「替刃式」的な方法は、グローバル化、効率化といった流れから、様々な分野で増えてゆくと予想されます(元祖「替刃式」のジレット社もいまはP&G傘下に)。しかし、それが100%になることはないだろう、というのが私の考えです。

大きな流れが変化しても、決して変わらない部分はどこかに残るし、それを求める人も存在する。そう考えながら、替刃式のジレットでヒゲを剃り、一方ではせっせと小刀を研ぐ。矛盾しているなあと苦笑いしながら、そんな生活を続けています。

ジレットセンサーエクセル替刃

ジレットセンサーエクセル替刃



「私はスーツケースを持って降りると、ほこりをはらい、一度も着たことのないパジャマ、歯みがき、歯ブラシ、安物のタオルと雑巾用の布切れを二枚ずつ、木綿のハンケチの包み、ひげ剃りクリームの十五セントのチューブ、替刃の景品についてくる安全剃刀をつめこんだ」

(レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』清水俊二訳、ハヤカワ・ミステリ文庫より)

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