金箔装飾

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つい先ごろまで青い火花をパチパチと散らしていたのに
今はもうすっかり湿っぽくなってあの勝手気ままな奴は身を潜めてしまった
いつも突然に痛いので全然寂しくなどない
むしろ清々しい気さえする
しかし毎日こうも湿っぽくてはまったく困ったものだ

わたしの仕事は和紙に色を染めたり、金箔を截って装飾することだ
おもに書道用の料紙を作ったり、襖紙を加工したりしている
料紙(りょうし)とは簡単に云えばきらびやかな装飾を施した紙のことである
金箔を砂子や切箔、野毛という形に裁断して、和紙の上に蒔いて華やかにするのだ

箔種

砂子は金箔を網を張った竹筒の中に入れて細かく振るったもの
切箔は金箔を四角く裁断したもの
野毛は金箔を細長く裁断したもの
裂箔は金箔を不規則な形に破いたもの
銀泥砂子は銀箔を極小の粉末にしたもの(=泥/でい)を振ったもの

日常ではあまり会話のなかに出てこない言葉ばかりである
しかしこの金箔装飾
じつは結構たくさん身の回りに隠れている

身近な装飾

この納豆のパッケージには砂子が振られているし
お肉が入っていた右の容器にはなんと切箔と野毛が振られているではないか!!
ほかにもお寿司の容器やお菓子の包み紙など
普段はあまりマジマジと見ないところにたくさん施されている
ちょっと振ってあるだけでなんとも豪華である

そして砂子(すなご)という言葉、誰でも1回は言ったことがあるはず
あの懐かしい歌のなかにも隠れている

「 たなばたさま 」
作詞/権藤はなよ 補作詞/林柳波 作曲/下総皖一

笹の葉さらさら
のきばにゆれる
お星さまきらきら
きんぎん砂子

五しきのたんざく
わたしがかいた
お星さまきらきら
空からみてる

 

意外と金箔装飾のデザインは平成の現代でもさまざまに活かされていた
しかし本当の金箔装飾は印刷のように簡単ではない
とても薄い金箔を手作業で截らなくてはならない
一枚では薄くて截れないので熱で二枚に貼り合わせることからはじまる

金箔2

左が一枚のもの、右が二枚に合わせたもの
貼り合わせても薄いので風が起きるとすぐに飛んでいってしまう
息を殺さなければならない

当然金属なので冬は静電気が起きていろいろな所にはり付いて全然言う事をきかない
長雨の季節になり湿度があがってきたのでやっと落ち着いて作業ができる時期になった
かと思えば今度は和紙が乾かない季節に突入するのだった、、、

下は源氏物語絵巻 柏木二の第六紙
一枚の料紙のなかに様々な装飾が施されている
黒いところは銀が経年により酸化したところなので本来は銀色

それぞれの部分re
画像引用)二玄社日本名筆選よりhttp://www.nigensha.co.jp/shodo/bk_info.html?2001&INF=1830

源氏物語絵巻の金箔装飾で特徴的なのは
砂子よりも加工の手間が掛かる切箔がふんだんに使われていることだ
最少で0.5ミリ角ぐらいだろうか
銀箔を振るった砂子でなく、極細かい切箔を蒔くことにより
幾何学的な四角い切箔が上代様の優美な書風を引き立たせているように思う
砂子だったらこうはいかないだろう

一枚の料紙のなかに大きさも種類も様々存在するので
古筆料紙を作るときは原本に忠実にたくさんの種類の金箔を截る必要がある
普段からコツコツと截っておいてガラス瓶に入れて保存しておくのである
下は1㎜角の切箔を截っているところ
技法的な説明はまたどこかで、、、
のんびりやっていると陽が暮れるので
とにかくどんどん目見当で截っていく

切箔截りre

源氏物語絵巻の場合大体10~15種類ほど用意しておく
下はいろいろな種類に裁断した金銀箔

箔いろいろ

柏木二全体では第八紙まである(下図参照)
よく見れば一紙づつ和紙の色も切箔の大きさも蒔き方も違うのがわかる柏木2
徳川美術館蔵 http://www.tokugawa-art-museum.jp/

下は柏木二に使用されている金箔の種類の一覧表である
鑑屋で制作するときに参考にしている表なので
もちろん他の工房とは大きさや加工方法も違う
不確かな所もあるのでご了承を

料紙装飾

こうして何種類もコツコツと準備した切箔、砂子、野毛を原本に合わせて再現していく
ほんとにほんとに地味な作業である
左下が原本、右下が鑑屋製

源氏物語原本と鑑屋製

大体いつも肩こりと闘いながら
資料とにらめっこしながら
技法を模索しながら
この地道な作業をしているのである

料紙は臨書を書き損じればただの紙くずになる
書き手が居なくてもその存在意義を成さないので
今まで奇跡的に続いてきたこの金箔装飾をとにかくひとりでも多くの人に知ってもらいたい
今はそんな想いでコツコツと作っている

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