おとこも日傘をさしてみようよ

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「モノクルをはめてみようよ」という唐突な手招きに遭遇したのは、高校生の頃。植草甚一氏のエッセイを再録した『古本とジャズ』(ランティエ叢書)においてでした。

モノクルとは片眼鏡のこと。怪盗紳士ルパンだとか、昔の欧州の政治家や軍人が眼窩に装着していそうな、怪しい光を帯びたアレです。「はめてみようよ」とカジュアルに誘われても「よし、やってみよう」とはならない類いのアイテムのひとつ。

高校生男子にとってのモノクルが容易には装着しがたい品であったのと同様、あるいはそれ以上の心理的抵抗をかつては覚えたもの、それは男にとっての日傘ではありますまいか。

夏の暑さはひたすら汗を流して我慢すべきもの、忍耐力を培う絶好の機会。ダメージを受けたぶんだけ強くなる。大きくなれよ……。ともかく夏がどんなに暑くとも、男が日傘を差すなどは問答無用で却下されるべき案件の筆頭といっても過言ではなかったのであります。しかし、ありがたいことに数年前から男も日傘を差して良いことに決まりました。

ヒマワリを日傘にする狩人。

ヒマワリを日傘にする狩人。



めでたく解禁したは良いものの、男が手にとれるような日傘の選択肢は限られていて、自分が欲しいものに出会えなかったのですが、昨年初夏に渋谷の東急百貨店本店で竹工芸の展示をさせて頂いた際、たまたま隣で展示をされていた琉球藍染工房さんの日傘を購入しました(特に男性用という品ではありません)。こうして昨年から日傘を導入し、今年もそろそろ使い始めようというところ。

80年代、任天堂のファミコンを買い与えられなかった子ども時代の毎日を屋外で過ごし、夏はプールに海に山、そして90年代の青年期をも同じように過ごした自分は、すでに相当の紫外線を浴びました。体感的な夏の暑さも年々厳しくなっているように感じます。

竹工家として仕事をする現在の時間、そしてこのさき40代、50代にかけて高い技術に達したときに、持てる力を発揮できる体力を保っていたいという目標を持っていますので、鍛えるだけでなく移動中の無用な消耗を極力避けて体を休めることも大事な心得と考えています。つまり、日傘は自分の体と仕事を守るための盾であって、タブーを帯びた呪いのアイテムではなく、無理にも装備せねばならない防具のひとつなのです。

いささか力みがちに書きました。……力んでいるのは裏返しで、実際はまだ恥ずかしいのです、日傘を持つのが。言うほどには持ち歩いていないのです。できれば仲間が欲しい。決して路上で目立ちたいわけではないのです。というわけで、改めてお誘い申し上げたい……

「オトコも日傘をさしてみようよ」

琉球藍染工房ウェブサイト

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