「つくる人」になれる場所

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自宅で校正の仕事をしながら、
夕飯のおかずにさつまいもを煮る。

風の通る廊下に置いてある野菜かごの中から、
この時季常備してあるさつまいもを選ぶ。
毛がしっかりと固い根菜用のブラシで洗う。
真っ白なふきんでくるむようにして水気をとる。
傷んだ箇所や芽をとり除く。
皮はむかず、大きすぎず、小さすぎない、
ひと口におさまるサイズに切る。
鍋に並べ、少しの水を注ぎ入れる。
火をつけて蓋をし、耳をすます。
沸騰する音が聞こえてきたら、極く弱火にする。
蓋を開けてみて、鍋底に並んださつまいもの断面が
濃い黄色に光っていたら、火を強めて水気を飛ばす。
鍋からたちのぼる湯気の中に顔を突っ込むようにして
オリーブオイルをたっぷりまわしかけ、
全体がつやつやするようによく混ぜて、
粗塩をふる。

皮の臙脂色と断面の濃い黄色のコントラストに、
白い塩の粒が散ったさつまいも。

十年近く使っているアイボリー色の鉢に盛りつけ、
食卓へ運ぶ。

ストライプの織り地の白いテーブルクロス。
砂色のリネンのランチョンマットを合わせるか、
タンポポの綿毛をデザインしたようなテキスタイルにするか。
藍色のマットには黒い漆椀と灰白色の飯椀。
ベージュ色のマットには朱い漆椀と濃灰色の飯椀。
きりっと清潔感のある竹の箸と、
受けとめる煤竹の箸置き。
卵の殻のような乳白色の銘々皿。

青菜と油揚げの煮浸しはマットな黒い鉢に。
鶏手羽元のバルサミコ煮はやわらかな黄土色の皿に。
ぬか漬けは白と青の対比が潔い染付に。
町の荒物屋さんで見つけたガラスの徳利と、
近所のギャラリーでひと目惚れしたガラスのお猪口。

料理と器、
器と布の組み合わせで、
絵を描くようにテーブルを考える。

校正の仕事は黒子、裏方。
書く人がいなければ手も足も出ない。
できあがった本を前に、
「わたしがつくりました」
と言うことはできない。

椅子をひきながら
食卓の上を眺める。
自分の「作品」を眺める。

台所は唯一、わたしが
「つくる人」
になれる場所。

 

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